ヘリコバクター・ピロリ菌の検査・治療

ヘリコバクター・ピロリ菌とは

ウレアーゼ活性という胃酸を分解する酵素を有することで細菌が生き抜くには難しい胃酸の中でも生きる術を持つ細菌です。

現在では感染経路は人から人の経口感染で、幼児期での感染が主なものではないかと言われ、家族感染が多いと考えられています。

胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃癌などの様々な消化器疾患に関与していると言われ、検査で感染が確認された場合除菌治療が推奨されます。

胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎の症状で上部消化管内視検査を受けたときに感染が疑われた、胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対し内視鏡治療を受けた、といった上部消化管内視鏡検査を行った場合に保険診療での検査・治療を行うことが可能ですので是非ご相談下さい。上部消化管検査を希望の場合、検査施設にご紹介させて頂くことも可能です。また、他院で実施している場合でもご相談下さい。


検査方法

当院で行っているのは非侵襲的診断法というもので特に痛みや苦痛を伴わない検査となっております。

1つ目は尿素呼気試験で先に述べたウレアーゼ活性を利用し、胃酸が分解されたときに生じる二酸化炭素を確認するものです。専用のパックに息を吹き入れます。検査薬を服薬して5分ほど横になった後、15分息を吐き出してもらい、その中の二酸化炭素の割合を確認します。

ただし、食事はしないで検査になり、結果はすぐに出るものではありません胃酸を抑える薬や、抗菌薬の影響を受けるため、休薬が可能ならば2週間程休薬期間が必要となります。

2つ目は便中抗原で便を容器に入れて提出して頂きます。胃酸を抑える薬の影響は受けにくいとされていますが、現在の保険診療では内服中の抗原検査は認められておりません。また抗菌薬の影響を受けるため、この検査でも両者の休薬が可能ならば2週間程休薬期間が必要となります。

3つ目に血中抗体測定がありますが、こちらは陰性であれば感染していない、とするのみで確定診断や除菌判定には用いません。

上記3つのうち、同時に2つであれば内視鏡検査で感染が疑わしいときに保険診療での検査は可能です。

1つの検査で陰性であっても疑わしければもう1つ他の検査を行うことも保険診療では認められています。


除菌治療

除菌治療は抗菌薬2種類とそれを効きやすくするための胃酸を抑える薬を1日2回、朝夕内服して頂きます。

除菌不成功であった場合、1種類の抗菌薬を別のものに変えたもので二次除菌を行います。除菌成功率は1次除菌、2次除菌ともに約9割となりますが、中にはピロリ菌が薬剤耐性を持ってしまい、除菌不成功になることがあります。


除菌治療の注意点

除菌治療は抗菌薬を2種類内服するため副作用の現れる頻度は高いです。

下痢、軟便を起こすことがありますが、軽度であれば自己判断で中断・変更は行わず最後まで内服して下さい。また、判断が難しい場合はご相談下さい。

発熱や腹痛を伴う下痢・血便、皮疹が出た場合は内服を中断しすぐにご相談下さい。他にも一次除菌では味覚障害が見られることもあります。

二次除菌ではメトロニダゾールという抗菌薬を内服しますが、副作用でアルコールを飲むと悪心・嘔吐がありますので除菌開始から除菌後数日は断酒をお願いしています。


除菌判定、除菌後の注意点

除菌判定は除菌後2ヶ月経過してから先にお示しした検査で行います。除菌成功の確認は必ず行いましょう。

除菌により胃の炎症が徐々に改善することで胃癌の発症リスクを下げることはできますが、除菌前に胃の炎症が進んでいた場合はリスクはどうしても残ります。

除菌成功した場合でも安心して受診や検診を受けなくなるケースが問題となっておりますので除菌後も上部消化管検査をお勧めしております。